2012年1月29日日曜日

バレエのカメラワーク

【2017年12月18日更新】
バレエのカメラワークとは言え、基本は映画理論を理解しておかなければなりません。その上で、舞台のバレエ撮影では、求められる画面サイズやカメラポジションの制約、音声同録長時間撮影が、映画とは全然、別次元のカメラワークをしなければなりません。また、ファンに観せるカメラワークと関係者に観せるカメラワークも違います。なので、ここでは、バレエ関係者が求めるカメラワークであり、プロとしてこういう映像表現をしたら、もっと喜んでいただけるのではないかと研究することが大事です。

 ※下記項目で寄って欲しくない方は、事前に言っていただければ寄りません。

【得意とするカメラワーク】

1)ルヴェランスの時の上半身サイズにズームイン。
まず、海外のバレエ・ビデオで同じカメラワークを確認しております。 ルヴェランスの時の上半身と言っても、実際はルヴェランス直前が正しいです。 つまり、ヴァリエーションが終わり決めポーズをし、一拍たったあとに上半身サイズにズームインし、そのままセンターまでフォロー撮影し、 お辞儀を開始するタイミングでズームアウトします。

2)グラン・パ・ド・ドウの中でリフトされた女性ダンサーのタイトショット。
但し、いらなければ寄りません。 当方は、海外のバレエ・ビデオで確認しており、宜しければ演技が成功しているわけですし、最高のリフトの時だけ笑顔の表情を一瞬でも撮らせて頂きたいと思います。

3)エスメラルダのヴァリエーションで最後の決めポーズ。膝をつきタンバリンを上げますね。 そのタンバリンが画面から切れないよう注意しながらタイトショットで撮ります。
エスメラルダのヴァリエーションは、ダンサーさんの張り切り方も全然違いますね。私も大好きなヴァリエーションですし、「頑張るぞ!」 と言う気持ちになります。特に、上手奥でタンバリンにバレエシューズを当てるところは見せ場ですね。 そして、小さすぎず大きすぎずの画面サイズで撮るため特に真剣勝負になります。 回転する時、手は胸のところなので少しタイトに撮りますが、回転が終わる頃にタンバリンを持った手がまっすぐあがりますね。 その時に画面から切れないようタイミングをはかり少しズームアウト致します。上手く撮れたときは、本当に幸せな気分になります。 ダンサーさんも同じですね。

4) 舞台を回るマネージュでソロの場合はタイトフォローし、群集の前では背景も分かるルーズフォローで撮り分けております。

5) 常に意味を持たせた画面サイズで、曲や物語に合わせ強弱を付けたカメラワーク。

【レヴェランスのカメラワーク】

 バレエの発表会や公演ではバリエーション後にレヴェランスをしますが、バレエコンクールではしません。つまり、審査として見ているのは演技であり、演技後の挨拶は必要ないからです。ということは、演技中はルーズ全身サイズで撮っており、演技後の挨拶は上半身サイズに寄ってもいい。我が子のアップを見たい親御様にとっても喜ばれるはずですね。

【理想論ではなく現実的なカメラワーク】

 まず、安くないと仕事は来ない。入札制度だってそうでしょう。だから、究極の選択はワンマン1台カメラです。しかし、一般的なニーズは複数カメラです。
1)ワンマン1台カメラ
2)ワンマン2台カメラ(※当方は4台カメラであり大好評中です。)
3)カメラマン2人、2台カメラ
4)カメラマン2人、3台カメラ

 この中で、私が知る多くのシステムは、3)の2人、2台カメラですが、当方は、現在、ワンマン4台カメラ(メインカメラ1台・サブ固定カメラ3台)で撮影しています。 そこで、複数カメラの最大の弱点は、リアルタイム色温度調整ができないことです。なので、「白鳥の湖」などでは青白くなり、酷い時は真っ青になります。しかし、当方は、カメラワークするメインカメラで必要な時には、リアルタイム色温度調整しているので真っ青にはなりません。ただ、普通の業者は一台では困難と考え、お客様も不安と考えますので、複数カメラによるマルチカム撮影が標準となりました。そこで、ただの4台カメラではなく「静」と「動」を組み合わせる究極の4台カメラとしてシステムを構築いたしました。

【スイッチャーが絡むカメラワーク】

 TV局による撮影では、スイッチャーによる切り替えで寄り引きの映像を構成しています。しかし、先生に聞くと「常に全身サイズを撮って欲しい。」と言われます。

 我々舞台のカメラマンは、クライアントでもある先生のご要望に答えるのが仕事です。

 そんな中でも当方は、そのルールを守りつつ、もっと感動してもらえる映像表現を創意工夫しています。そこで、ワンカメショーならずっと全身サイズで撮ることが可能ですが、スイッチャーを絡めるとTVと同じになり寄り引きを繰り返すため、常に全身サイズにはなりません。だからこそ、2台あってもヴァリエーションはワンカメショーになっています。ですが、バレエは1人だけではないので、寄り引きは絶対必要です。

 そんな中、寄っても全身サイズで、グループではフォーメーションをみせるため全員が映っているサイズになります。しかし、客観的に見た場合、やはり単調な構成になります。だからこそ、挨拶の時はせめて海外のバレエ公演動画でもしている上半身サイズを撮ってあげたいのです。

 また、リフトなども全てではありませんが、男性ダンサーの足が止まり持ち上げた最高のリフトシーンこそ、女性ダンサーのタイトショットを一瞬ですが撮ってあげており、これも海外の動画で確認しております。こうすることで、先生のご要望のルールは守りつつ映像にメリハリが生まれ、見ごたえのあるバレエ映像となるのです。

 もちろんこれには、カメラが2台あっても、1台がズームイン・アウトをしなければならず、ズームを嫌ったりマニュアルズーム出来ないカメラマンに寄りはありません。そして、ダンサーのアクティブな演技についていけないため、小さなサイズでフォローしていると、ますます、感動のない映っているだけの映像となってしまいます。

 当方は、プロ中のプロとして、そんいうことを言われないよう常にバレエの映像を研究しています。

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